歯磨き粉の選択について part2
こんにちは!
平和台ファミリー歯科Dr.の三浦です!
今回は、前回に引き続き歯磨き粉について、特に【研磨剤】についてのお話をメインでしていきたいと思います!
ちなみに前回は【フッ素】についてお話しましたので、もしよろしければご一読ください!
では、【研磨剤】の話から、、、
まず歯磨き粉になぜ研磨剤がは入っているかというと、
プラーク(歯垢)とステイン(着色)の物理的除去のためです。
歯ブラシだけで磨き続けた場合は、数週間以内に歯面が着色して褐色になります!
しかし、研磨剤を含む歯磨き粉を使用することで、一旦付着したステインも除去できるのです。
『研磨剤を含む歯磨き粉では歯が削れるから、やめたほうが良いよ!』
と言われたことはありませんか?
私は、研磨剤の使用に関しては『特に問題ない』と考えています。
(*健全天然歯に限定する)
以下に理由を書いていきますが、、
まず歯磨き粉を用いての実験で、
健全な歯面(エナメル質)には磨耗は起こらなかったが、酸性の飲料水に浸した後だと磨耗が起こったというin vitroでの実験報告があります。(1)
実験内容として、酸性飲料水に90秒間浸すなどの環境でおこなわれていることなども考慮にいれないといけません。
また、歯の研磨性の評価はRDA法(Radioactive Dentin Abrasion)という方法が用いられており、ISO規格で250以下とするようにされています。
日本の市販されている歯磨剤は、RDA値が150以下が主流となっています。
結論としては、
研磨剤は健全な歯面での使用は特に問題は無いが、
酸蝕症(歯が溶けている状態)、根面露出(歯の根が見えている状態)などの口腔内環境では避けたほうが良いかもしれません。
また、それよりも注意していただきたいのが食生活やブラッシングによる影響で、
酸性の物質をだらだらと口に含むことを避ける、適切な圧・方法でブラッシングをすることが重要となります。
具体的にその圧は大体250g以下と言われており、毛先が少ししなる程度です。
先ほどより酸性物質についてお話していますが、
ここで歯が溶けるメカニズムについて軽くお話をしたいと思います。
まず覚えていただきたい言葉が 『臨界pH』 というものです!
これは歯質がミネラル喪失を起こすといわれている最も高いpHの値で、
象牙質でpH6.0-6.2、エナメル質でpH5.5以下となります。
プラーク(歯垢)溶液中のpHが5.5以下に低下すると、エナメル質のハイドロキシアパタイトが唾液やプラーク溶液中に溶け出します。
これが『脱灰』という現象です!
また歯の表面は、唾液中のリン酸イオンやカルシウムイオンが再び取り込まれ、一度脱灰した歯が元に戻る『再石灰化』という状態を繰り返しています!
その中でフッ素が取り込まれると、耐酸性に強いフルオロアパタイトを形成し、溶けにくくなります。(フッ素に関してはpart1で)
少し話は脱線しましたが、
今回の歯磨き粉の選択なので
研磨剤が多く含まれる、または着色除去に特化しているものは
しっかりとした天然の歯に、、、
研磨剤が少ない、もしくは含んでいないものは
酸蝕症(歯が溶けている状態)、根面露出(歯の根が見えている状態)に、
などと、
ご自身の歯の状態にあわせて選んでいくことが重要になります。
また、酸性物質の摂取のタイミング、歯磨き粉を併用した歯ブラシにも気を使う必要があるかもしれません。
下記に低研磨の製品を挙げておきます!
こちらの歯磨き粉はcheck upシリーズのroot careで、
根面が露出した方におすすめの製品です!!
研磨剤が入っておらず、なおかつフッ化物濃度が1450ppmと高濃度となっている点が大きく薦められる点です!
付け足しですが、
着色が気になる方へおすすめしたい歯磨き粉も紹介しますね。
先ほどお話ししたように使用に注意が必要です!
ウェルテック株式会社さんから販売されている『クリーニングジェル ソフト』です。
使用法を正しく守れば、かなり効果はあるのではと思います。
あくまで着色に効果があるので、歯自体の変色とは分けて考えてくださいね!
今回は研磨剤についてのお話しでした!
次回は 知覚過敏に対する歯磨き粉です!
参考文献
1. Nakamura M,.Impact of toothpaste on abrasion of sound and eroded enamel: An in vitro white light interferometer study. Am J Dent. 2015; 28: 268-272.